はじめに
21世紀になり、日本は「超・高齢化社会」を迎えている。65歳以上の高齢者が日本の総人口に占める割合が現在は15%程度だが、2050年には3割を超すという予測がなされている。2000年4月から公的介護保険制度がスタートし、これに伴い「ケアマネージャー」等の資格が誕生したが、福祉の充実は増々今後とも望まれる。
福祉の充実が求められるのは、何も高齢者福祉の分野だけではない。女性の社会進出に伴う児童保育の問題や、身体障害者の社会参加・自立についても関心が高まるばかりである。これらに応えられる専門的な知識や技能を有する人材が、現在幅広く求められている。当然のことながら、各分野における資格の充実も図られている。
そこで以下では、現在進化が著しい福祉の分野に関する資格を取り上げることにしよう。この分野では、一般的に受験資格として一定の要件が課されているものが多いが、資格試験業界全体の中で、最も成長著しいところでもある。
1.ケアマネージャー
公的介護保険制度の導入によって誕生した新しい資格で、将来性は保障されているといえる。要介護状態になった人と行政府側の連絡・調整を行い、快適な介護サービスを受けられるようなケアプランを立てることを主たる業務とする。試験に合格し、所定の研修を終了することで資格を得ることができる。
試験を受験するためには、看護・医療系の国家資格や、福祉系の国家資格に関連する職務に5年以上就いていることが必要となる。各種国家資格の合格者には、一定の科目免除制度もある。
2.社会福祉士
身体や精神に障害のある人の相談にのり、必要な助言・指導を行うのが社会福祉士である。試験は「老人福祉論」「社会保障論」など13科目について実施され、合格後に登録をすれば社会福祉士になれる。福祉関連で最も有名な国家資格の一つである。
試験を受験するには原則として4年生大学において社会福祉関係の指定科目を修めて卒業する必要がある。資格の権威からいえば、今後とも福祉関係の大学に進んだ人の一つの大きな目標になるといえよう。
3.介護福祉士
日常生活を営む上で師匠のある人に対して、入浴・食事その他の介護サービスを提供するとともに、一緒に住む家族に対して開土の指導・アドバイスをするのが介護福祉士である。社会福祉士とともに昭和62年に設立された、福祉関係の基本資格の一つである。
この資格は国家試験の受験で取得できるほか、全国にある介護福祉士の養成施設(大学・短大・専門学校など)を卒業することによって無試験で取得することができる。試験も筆記・実技と科目数は多いが、合格率は50%程度で比較的取得しやすいものである。
4.臨床心理士
心理学の高度な知識と技能を用いて、患者の心理的な問題を臨床心理面接や臨床心理査定などで解決する専門家である。ある意味、精神科医と少し似ている。資格を取得するためには、原則として、日本臨床心理士資格認定協会が指定する心理系の大学院を修了することが必要である。その後、筆記及び口述式の試験に合格することで資格が取得できる。
心理系の資格では最高に権威のあるもので、民間資格ではあるが、取得を希望する人があとを絶たない人気資格となっている。
5.ホームヘルパー
ホームヘルパーとは、心身に障害がある方や高齢者などの家庭を訪問して、家事援助や介護をする人のことで、各都道府県知事によって指定されるものです(ということで、厳密な意味では資格ではありません)。
ホームヘルパーには1級から3級まであり、それぞれ都道府県知事の指定する養成課程を修了する必要がある。級によって必要な研修の時間が異なる。大学ではまだカリキュラムが少ないが、専門学校では学校の正規過程に組み入れているところも多く、1級の取得も可能である。主婦を中心に講座に通う人が少しずつ増えている。
6.福祉住環境コーディネーター
東京商工会議所が実施する公的資格であり、福祉系の資格の中でも受験資格が必要ないものとして有名である。試験は1級から3級まであり、高齢者や身体障害者を考慮に入れた住環境及び生活全般についての知識が問われる。現在、受験者数が急増中で、人気の資格となっている。受験者の層としては、福祉や医療看護に従事している人の他、建築やインテリア関係の仕事をしている人たちも多い。
まとめ
福祉に関する資格は上記のものに限らず「医療に関する資格」「看護に関する資格」「児童保育」「障害者教育」に関するものまで含めれば、その数はゆうに100を超える。資格試験分野の中でも、一つの大きなウェイトと占める地位にあると言える。ただ、当然のことではあるが、特にこの福祉分野に於いては、資格を保有していること自体よりも、自ら率先して被介護者と共に生活をしていく、という心がけが大切である。資格は一つのステイタス、看板とはなりうるが、実際に現場で実務に携わることがその何十倍も大切であることは言うまでもない。
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